風の噂に怯える私
ずっと胃の調子が悪く、あまり食べられない日が続いたので
ついに人生初の「胃カメラ」をすることになりました。
風の噂に聞くの胃カメラは、とにかく苦しくて、苦しくて、それはそれは苦しいとのこと。
口から入れるのは怖すぎたので、まだマシと噂の「経鼻(鼻から)」にしてもらいました。
静寂のクリニックに響く嘔吐音の恐怖
近所の内科の、胃カメラ予約専用の時間帯。
当然、貸し切り状態の私だけかと思いきや、
先客がいました。
どうやら夜中に具合の悪くなり、急遽駆け込んできた方の模様。
カーテンで仕切られた入り口近くの処置室で、
とても辛そうに横になっています。
「大変な時にすみません……」という申し訳ない気持ち。
しかし、一番奥の胃カメラ室に入った瞬間、私の頭にひとつの懸念が浮かびました。
カーテン1枚のこの距離。
え、今から私が放つ
『おえーーーーーーっ!!』
とかいう見苦しい音を具合悪く寝ている人に聞かせて大丈夫?
先生はそんな私の心配などお構いなく、着々と胃カメラの準備を進めます。
私も恐る恐る、深いリクライニングチェアのような診察台に横たわります。
禁断のフライング麻酔
「はい、じゃ、鼻とのどに麻酔しますねー」
鼻の奥に、スポイトで液体をシュシュシュっと注入されます。
……痛い。
地味に痛いし、なんかツラい。
感覚が麻痺してきます。
今このまま外に放り出されたら、絶対に生きていけない。
と不安になるレベル。
「はい、口開けてー」
続いて喉にも同様の麻酔。
うん、これで完全に外では生きていけなくなりました。
もう、どうにでもなれ。
文字通り「まな板の上の鯉」状態。
「しばらくそのままでねー」
飲み込むなこと言うことですよね。
しばらくって、どれくらい……?
喉にかけられた麻酔を必死に溜めているため、質問すらできません。
その間も、先生はマイペースに鼻胃カメラの準備をしていきます。
だいぶ時間経ったよね?
もういいかな?
この状態もだいぶん辛いし。
もう、いいよね……?
完全に自己判断で、ゴクンと飲み込みました。
それからさらに数分後、ようやく準備が整った様子の先生。
「はい、じゃあ、飲み込んでいいよー」
え!今!?!?
「はい……」
今飲み込んだように装う私。
……
麻酔、効いたかな?
え、ちゃんと効いてるかな?
とっくに飲み込んでましたと告白できないまま
「はじめますねー」
とストローのような太さの黒い管が鼻に近づいてきます。
いや、怖い!!!!
そして、侵入
痛い!鼻が痛い!!
喉は痛いかわからない!!
麻酔が効いているかどうかもわからない。
この感じが正解なのかわからない!!
そんで、苦しい苦しい苦しいーーーーー!!!!
まだ、入りますか!?え、まだ入るんですかその線――――!!!!
その間、私は「おえおえ」言いっ放し。
いろんな穴から液体垂れ流し。
誰にも見せられない、人間の尊厳を失った姿。
よかった、先生が男前じゃなくて(失礼)
誰ですか、「鼻からの胃カメラ楽」とか言った人。
「はい、胃が見えてきたよー」
や、やっと胃に……
「ちょっと空気入れるからねー」
嫌です。
しかし何も訴えることができないまま、空気入れられました。
ぐぅ……変な感じ。猛烈に気持ち悪い。
「だいぶ荒れてるねー」
一刻も早く抜いてください、カメラ。
突然の放置プレイ
その時、カーテンの向こうから看護師さんの緊迫した声が。
「先生―!」
何やら隣の急患さんの件で指示が飛び交っています。
え、何?それ、今必要なやつ?
私とんでもなく辛いんですけど。今じゃないとダメですか?
「ごめんねー」
いや、本当ですよ。もっと心の底から謝って?
「じゃ、ちょっと胃の中洗っておくね」
え、どうゆうこと?と問う間もなく、
カメラから液体が噴射され、胃の壁が洗われていきます。
おお、キレイになった!!
しかし、辛さも気持ち悪さも変わらず。
「先生―!」
そしてまたしても処置室からお呼び出しの声。
えー、もういいって!!ツラいって!!
そちらも辛いだろうけど、私も限界なんだって!!。
せめてこれ抜いてからにして!!
「あーごめんごめん」
いや、本当ですよ。もっと真剣に謝罪してください。
「じゃあ、十二指腸の方も診ておこうか」
え、まだ奥に入るの!?まだ終わらないの!?
ぐぅぅぅぅ……早く終われ早く終われ早く終われ……
「うん、大丈夫だね。じゃあ、抜いていきますね」
よっしゃーーーーーーーーーーー!!!!
待ちに待った終了の言葉!!
侵入時よりハイスピードで引き抜かれる管。
気持ち悪いけど、早く!もっと早く抜いて!!
「はい、お疲れ様―」
本当だよ。
すると看護師さんが半笑いで続けました。
「はい、頑張りましたねー
途中ちょっと待ってもらう時もあって、申し訳なかったです」
本当だよ!!
あの状況で待つのツラすぎだよ!!
検査日を今日にした私の運の悪さよ。
疲労困憊と、だれにも言えない告白
結局、胃の中は「荒れている」くらいで大きな問題はなく一安心。
しかし、鼻は痛いし喉の違和感はすごいし、疲労困憊。
……これって、私が麻酔を飲み込むのが早かったせいでしょうか?
それについては、先生、本当にごめんなさい。
結局、だれにもフライングを告白できないまま、逃げるように病院を去りました。
二度としたくないですが、世間にはこれを「年に一回」受けている人がいるとか。
正気の沙汰とは思えません。


